南東北風土記

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浅香沼 編

 

幻の浅香沼(→ トップページ)を訪ねて郡山市は日和田駅に降り立つ。

中世に有名な安積沼があったと言われている地である。

「浅香沼」と「安積沼」。その関連は? 


安積沼の跡を探していると、一羽の鴉が舞い降りてきた。

付かず離れず、こちらを窺う風情。


その鴉に先導されるかのようにして辿りついた安積沼跡の案内板。

冬田の中に寂しく建ち、沼の面影はどこにもない。



されば近くに池・沼・湿地を求めて強引にイメージを紡がん、と散策を始めた一行に呆れたのか、いつやら鴉の姿は消えていた。


しばらく歩くと…住宅街の中に沼発見! これぞ浅香沼⁉️

探し求めた浅香沼の幽玄さこそないものの、山東京伝の怪談「復讐奇談安積沼」の妖しい雰囲気が漂う。夜になると小平次の幽霊に遭遇するかも。



 

近くの安積山公園に足を延ばす。

 

芭蕉と曽良の2人が安積沼で花かつみを探し歩いた故事を記念した公園である。

なお、万葉集の歌枕で知られるあさか山であるが、この公園ではなく、この辺りから眺められた山があさか山であったと思われる。


 

さらに足を延ばして西方寺の蛇骨地蔵堂に至る。

中世の大蛇伝説に由来する蛇骨に刻まれた地蔵尊を祀ったお堂である。

 

あやめ転じて大蛇が佐世姫に調伏されるダイナミックなストーリー、悪い男はそのままかい! と突っ込みたくもなるが、それはさておき、ここでも`沼`が重要な役割を担っている点に注目すべきであろう。

 (探訪メモ)

 日和田の地は、古代から近世にかけて記録に残され歌に詠まれた安積沼や花かつみ、あるいは中世の大蛇伝説など、伝承豊かでありながら、史跡としては何も残っていないところが興味深いです。残念ながら陸奥国風土記に記されたという浅香沼を見つけることはできませんでしたが、おおいに想像力を刺激される探訪となりました。

 もっとも、浅香沼の伝承を踏まえると、見つけられなくて幸い?

 (参考)


 五月朔日 天気快晴。日出ノ比、宿ヲ出。壱里半来テヒハダノ宿、馬次也。町はづれ五、六丁程過テ、あさか山有。壱リ塚ノキハ也。右ノ方ニ有小山也。アサカノ沼、左ノ方谷也。皆田ニ成、沼モ少シ残ル。惣テソノ辺山ヨリ水出ル故、いづれの谷にも田有。いにしえ皆沼ナラント思也。山ノ井ハコレヨリ(道ヨリ左)西ノ方(大山ノ根)三リ程間有テ、帷子ト云村(高倉ト云宿ヨリ安達郡之内)ニ山ノ井清水ト云有。古ノにや、ふしん也。

曾良旅日記(「芭蕉 おくのほそ道」岩波文庫)


 すか川を出、ささ川、郡やま、高倉のこなたの野の中に、まはり十丈あまりのぬまあり。その中に小峰あり。里の長に聞侍れば、これなん浅香のぬまなりとかたる。又そこに高さ七八丈の山あり。是を浅香山という。

前田慶次日記



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